こんにちは。
元美術教師のうさぎ先生です。
わたしは新卒採用として公立と私立の両方から合格をいただき、迷った末に私立の中高一貫女子校で勤務することを選びました。
他の私学に勤める先生と交流する中で分かったことなのですが、年度当初に適性検査が必須だったり、受験の際に年齢制限があったりと、私立の教員採用試験は地域や学校によって試験形式も応募条件も大きく異なるようなんですよね。
そこで今回の記事では「私学の教員採用試験を受ける前に知っておいた方がいいこと」として、独特なスケジュールやさまざまな応募条件、選考試験の内容などをご紹介します。
- 教職を目指している
- 私立の教員採用試験に興味がある
- 公立教員からの転職を考えている
- 地元以外の私学教採も視野に入れている
- 私学ならではの選考について知りたい
こんな人におすすめの記事です。
学校法人やお住まいの地域によってはご存知の内容と大きく異なる部分があると思いますが、だからこそ「こんな地域・学校もあるんだ!」と、一例として参考にしていただけますよ。
私立中学校・高等学校で働くことについて興味がある方は、ぜひ最後までご覧くださいね。
私学の教員採用試験の独特なスケジュール
私学は募集が毎年あるとは限らない
私立学校の教員採用は公立と異なり個々の学校が独自におこなうので、基本的には各学校で欠員が出ることで募集がかかります。
少子化のこの時代において単純な教員増というのはすごく珍しいので、退職する先生がいないと新しい先生を採用する理由がないんですよね。
新卒で就職した先生がそのまま定年まで勤め上げる場合もありますし、音楽や体育、美術などの実技系教科(いわゆる副教科)の場合はそもそも正規教員の人数が少ないので、何十年も募集が無いなんてこともよくある話です。
毎年夏に決まって教採が実施される
公立とは、大きく異なりますよね。
夏の時期に試験がなくても、秋・冬に開催される場合もある
欠員が出ることで募集がかかるということは、夏以外にも教採が実施されることもあるのです。
大体5月ぐらいまでに退職が決まっていれば夏休み中に採用試験が実施されるようですが、それ以降、夏休みが明けてから退職を希望する先生が現れた場合は12月末頃に採用試験が実施されることになります。
私学にとって1月〜2月は入試期間でものすごく忙しいので、年末の実施を逃すと2月末〜3月頭の年度内ギリギリに採用試験を実施という感じですね。
ただし、上記はあくまでも一例です。
教採の日程を限定せず随時試験を実施し、適当な人材が現れ次第締め切りますという学校もありますし、各自治体の私学連合等にあらかじめ登録された人材から選考するという学校もあります。
働きたい私立学校の採用情報の有無や日程をしっかりチェックしておく必要があります。
注意!事前に私学教員適性検査が必要な自治体も
東京・兵庫・群馬などは、各学校の採用試験とは別に私学教員適性検査という試験をおこなっています。
一般教養・教職教養を含む・小論文・教科専門科目などの内容があるようですが、採用のための資料を提供する目的で実施するものであり、この試験自体が合否の判定を行うものではありません。
単純に各校で採用試験の問題を作成する手間を省くためのものなのかなと思いますが、受けておくと私学教員志望者リストに掲載されて、教員を募集している学校からのアプローチにつながるみたいです。
東京は適性検査を受けないと
そもそも私学の採用試験は
受けられないようですし、
兵庫は教科によって異なります。
ややこしいですね…
大体4月〜6月には適性検査の申し込み自体が終わってしまうみたいですので、勤務を希望する自治体がこの私学教員適性検査の制度を使っているかどうかは、私学教員に興味を持ち始めた時点で確認しておいた方がいいですね。
公式群馬県私立小・中・高等学校協会
公式東京私立中学高等学校協会
公式兵庫県私立中学高等学校連合会
適性検査がある地域の学生さんだと「適性検査が必要ない私学があるなんて、知らなかった!」なんて場合もあるそうですし、逆もまた然りです。
私学の教員採用試験は応募条件がさまざま
中高両方の免許状所持が求められやすい
中高一貫校の場合は特に、中高両方の教員免許(一種又は専修)の所持を応募条件とする学校がほとんどです。(中学のみの技術、高校のみの情報・工芸などは除く)
私学は転勤がないので、大学入試の科目変更などの影響でカリキュラム変更となった場合にも柔軟に対応できる人材が欲しいということもあり、社会科の正規教員採用には中学社会・高校地歴・高校公民の3つを所持することが望ましいとされていることが多いようです。
情報と数学など複数教科の教員免許を所持していれば、単純な加点というわけではないとしてもある程度優遇される場合がありそうです。
授業の割り振りや時間割を考える側としては、融通が効いて助かりますからね。
キャリア形成のための年齢制限
長期勤務によるキャリア形成を目的として、採用時の年齢上限を設けている学校があります。
私学は転勤がないので、一般企業と同じような感じですね。
無期雇用(正規教員・専任教諭)の場合は特に35歳あたりを上限とする学校が多いみたいです。
宗教に関する応募条件がある場合も
私学には仏教系、キリスト教系など、何らかの宗教に関係する学校が多く存在します。
わたしの友人の勤め先はキリスト教系列の学校なのですが、正規教員の場合は洗礼を受けた人しか応募ができず、応募書類には所属教会名や教会での働きなどを記載する欄があったそうです。
そこまで縛りの強い条件ではなく「○○教の精神に基づく本校の教育活動に賛同できる方」という形で記載している学校もあります。
平たく言えば学校の方針に協力・共感できる人を求めているということですよね。
私学で講師として勤めれば、教諭に採用される?
これは思い込みで勘違いしている人が多いのですが、「私学で講師として勤める=数年経過すれば教諭(正規教員)の採用がある」とは限りません!
一時的に講師が欲しいだけで
正規教員としての枠は無いという
場合も普通にあり得ます…
少子化で生徒数が減少している学校も多い昨今の事情から、人件費を抑えるべく正規教員を増やせない学校もありますし、勤務の状況によって正規教員に相応しくないと判断される場合もあるからです。
実際に、多くの学校では応募に際して「教諭として採用される道が開かれる場合があります」「試用期間後に専任採用の可能性があります」のような曖昧な書き方をしているはずですし、書かれていない場合は教諭としての登用は期待しない方がいいです。
さまざまなトラブルを回避するべく講師しか公募しない(いきなり教諭としては採用しない)という学校もあるそうですが、それはそれで応募する側からしたら将来が不安ですよね…。
「転勤がないから私学を選びたい」と考えている人は特に、募集要項にどう書かれているかをよく確認しておいた方がいいです。
私学の教員採用試験の選考内容や面接
履歴書・小論文などによる書類選考
ほとんどの学校が書類選考を一次選考としており、二次選考以降の内容や日程は書類選考通過者にのみ通知という場合もあります。
一例として、こんな書類が必要になります。
- 履歴書(学校指定の有無を要確認)
- 成績証明書(最終卒業学校)
- 卒業(見込)・修了(見込)証明書
- 教職免許状写しまたは教職免許取得見込み証明書
- 小論文・志望理由書・自己推薦書
- 授業指導案
履歴書は学校指定の形式が決まったものをダウンロードする場合がほとんどなので、市販品を用意する前に必ず確認してくださいね。
自筆のものを求める学校が多いのですが、ものすごくきれいな字が求められているというよりは、「この人の板書は読めないんじゃないか…?」と思わせない程度にはていねいに書くべきだと思います。
小論文のテーマは「わたしの目指す○△教科の授業とは」や「女子校(男子校)の教育について」など、学校によって求める内容がさまざまです。
自筆の可・不可に限らず、もちろん誤字脱字には気をつけてくださいね。
採用試験の担当をしていた時、
別の学校と間違えて出したのかな?と
思えるような内容が届いたことが
あって…苦笑いしてしまいました…
見直ししてから提出しましょう…
教科によって追加で必要になる書類も
英語であれば英検・TOEIC・TOEFLなどの結果のコピー、美術であれば作品写真を使ったポートフォリオといった具合に、実力や実績が分かる資料を求められる場合があります。
面接・模擬授業・教養試験など個別の選考
書類選考を通過した後は、一例としてこんな試験がおこなわれます。
- 筆記試験(教職教養・専門教養)
- 実技試験
- 模擬授業
- 教科教員面接
- 管理職面接
- 役員理事面接
どこまでの選考回数を重ねるかは学校次第ですが、無期雇用の正規教員採用であれば三次選考・四次選考ぐらいまでじっくり時間をかけて選考されることが多いです。
必ずしもすべての選考が土日に実施されるとは限らないので、現職がある状態で試験を受ける場合や遠方の学校に挑む場合は要注意ですね。
履歴書を書く段階で意識するはずのことではありますが、学校の教育理念や建学の精神、コース編成や部活動といったHPやパンフレットで簡単に得られる程度の情報に関しては、覚えるぐらい読み込んでから面接に挑んだ方がいいと思います。
音楽や体育、美術などの実技系教科の採用では実技試験がある学校がほとんどですが、用具の持参が必要かどうかは学校によりますし、持ち込み不可の場合もあります。
私学の教採は過去問がない
公立と違って学校独自の試験にて選考となるので、過去問で事前に勉強することができないというのが大きな特徴です。
仮に同じ学校や同じ教科でも、採用のタイミングによって求められる人材が変わる(どんな欠員が出たかによる)ので、知り合いや先輩から過去の傾向などを聞いてもあまり効果がないかなと思います。
「理科の採用」だとして、化学を求めているのか物理を求めているのか、中学基礎なのか大学受験を見据えた高校生の対応なのか…といった具合ですね。
クラブ顧問の問題もありますし、
私学の教採はタイミングも含めての
学校との相性って感じがします
実際に受けてみて…公立より難しかった?
公立のように複数名が受かるわけではなく、基本的には欠員1名分を採用するための試験ですので、私学の方が難しいという声もあるそうです。
でも逆に言えば、その1名分の枠にピッタリな人材であれば、採用されるんですよね。
そういう意味では公立と比べて簡単だ・難しいといった議論自体に意味がないとも言えます。
ちなみにわたしは公立の対策のみで私立に関しては何の情報もない状態で試験を受けました。
実技が公立よりもハードな内容だったことと、面接ではより教科の内容に関して掘り下げた質問があったことは印象的でしたが、大きく困ることはありませんでした。
公立教採の試験内容や当日の様子については、別の記事に合格体験記として詳しくまとめています。
私学の採用情報を集めたHPで情報収集
基本的には各学校のHPなどで採用情報を確認することになりますが、自治体によっては募集状況や窓口をまとめて掲載してくれている場合があります。
公式大阪私立中学校高等学校連合会
公式高知県私立中学高等学校連合会
こちらの一般財団法人 日本私学教育研究のページは全国の採用情報が集約されていますが、更新曜日が月・火・木・金となっていますので、ある程度働きたい地域の目星がついている場合は学校ごともしくは自治体ごとのHPを確認するほうが確実です。
おわりに
今回の記事では私学の教員採用試験を受ける前に知っておいた方がいいことについて、独特なスケジュールやさまざまな応募条件、試験の内容などをご紹介しました。
公立の場合も地域や学校の規模によって採用条件がさまざまではありますが、私学は各校が独自に採用するため、やはり公立以上に「学校による」という部分が大きいんですよね。
これから教員採用試験を受ける人や教職志望の学生さんにとって、この記事が少しでも参考になると嬉しいです。
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