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9月入学説は結局どうなった?学校再開できそうだし、今年度は見送り?

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こんにちは。
元美術教師のうさぎ先生です。

4月末から本格的に議論の的になってきた「9月入学」に関して、賛成・反対意見や疑問についてまとめた記事を書いたのが1ヶ月ほど前のことです。

今回の記事では、この1ヶ月間で交わされた議論についてまとめています。日本における9月入学に関して、この記事が「コロナ禍の2020年春にこんな議論があった」という記録になればと思います。

5月19日 文部科学省から今年度は見送ると明言

5月19日の時点では、2案が出されていました。

第1案なら21年9月に一気に制度を移行できるが、21年度の小学1年生は1学年が17カ月分に増える。将来の受験や就職活動で競争相手も増え、不利になりかねない。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59299790Z10C20A5EA2000/

第1案は、1年で移行するというものです。多くの人がイメージするのは、この案だと思います。
同じ学年の子どもが増えるため、競争相手が増えるというデメリットがあります。

1学年を5年間は13カ月分とし、対象を平準化しながら時間をかけて移行するアイデアが第2案にあたる。負担の偏りがなくなる半面、毎年1学年の範囲が変わり、制度としては複雑になる。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59299790Z10C20A5EA2000/

一方こちらの第2案は、5年かけて移行するというものです。これはつまり、カリキュラムが毎年違うってことですよね……?
第1案のような偏りはなくなりますが、現場の混乱がものすごいことになりそうです。

政府・与党は十分な審議や財源の確保が間に合わず、教育現場にも混乱が生じると判断し、今年9月の開始は見送る方針を決めた。21年9月の導入を想定した議論を始めており、政府高官は19日「時間はあまりない」と語った。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59299790Z10C20A5EA2000/

実現するとしても来年度からだろうという見方はされていましたが、ここで今年9月の開始は見送ることが明言されました。
第1案・第2案ともに、2021年度以降を想定しているということです。

何のための9月入学?

「学習の遅れや乱れを取り戻したい」から話題になっていたはずの9月入学ですが、「9月入学でグローバルスタンダードに揃えたい」という意見が目立つようになってきました。

そもそもの目的は、前者のはずですよね。

ただでさえコロナ禍で大変な中で様々な労力が9月入学に割かれてしまい、論点がすり変わってきている感じさえしています。
9月入学に踏み切ることが、はたして今、学習環境に悩む生徒たちのためになるのでしょうか。

繰り返すが、まず問われないといけないのは、「9月入学をどう実現するか」や「どんな選択肢があるか」の前に、「9月入学が本当にそこまで重要なのか。他の政策的な課題と比べて優先順位は高いのか」という点ではないだろうか。
わたしは9月入学に取りかかるヒマと労力、あるいは予算があるなら、さっさと、別のもっと重要な問題に向き合うべきだと考える。

https://news.yahoo.co.jp/byline/senoomasatoshi/20200522-00179635/

5月28日 文部科学省から新しい見解

9月入学は導入困難という見解が発表されました。

「9月入学」について、文部科学省では、現状では導入は難しいという見方が広がっており、臨時休校中の学習の遅れを取り戻すため、分散登校を実施するといったそれぞれの学校の実情に応じて時間割りの例を示すなどの対応策を検討しています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200528/k10012447971000.html

緊急事態宣言を解除できる状態にまで至ったから言えることかもしれません。
「なんとか追いつこう!」「2ヶ月分なら、取り戻せる……か……?!」という雰囲気ですね。

地域によって差はありますが、6月1日から学校を再開するという学校が多い様子です。

ところが5月31日、つまり「明日から再開する学校が多い」という中でこんなニュースが。

感染者が急増する同市では、学校が本格的に再開した5月25日以降に児童、生徒らの感染が相次いで確認され、小中学校など5校が休校に追い込まれている。

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/612960/

生徒の感染が相次いで確認されたため、休校を余儀なくされているとのことです。

体温や体調不良の有無を記した健康チェックシートを提出させるなど学校側は対策を取っていたが、熱がない子どもの感染が相次いで判明した格好だ。

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/612960/

無症状の子どもも多いって聞きますもんね……。

市教育委員会幹部は会見で「(守恒小の)入り口で防げなかったのが反省点だ」と厳しい表情。体調チェックなどの対策をしっかり取るよう市内の各学校に通知する考えを示したが、市内の小学校のある幹部は「感染が確認された児童は元気に登校していたと聞いている。そうなると、学校内で感染を防ぐのは非常に難しい」と肩を落とす。

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/612960/

そうですよね。学校で起きた怪我とか事故とかならまだしも、これを学校側の落ち度と言われても、正直学校側にはどうしようもないことだと思います。

これから同様の形での感染が、そして学校を責める声が各地で発生するとしたら、入学時期より何よりそれこそが教育活動を阻むものなのではないでしょうか。

9月入学にしないとして、出来ることは?

指導員の増員

臨時に指導員を増やす話もあるそうです。

担任をもつ教員は生徒保護者に対してさまざまなケアをする必要があるので、授業に指導員を充ててもらえることで助かる学校が多いと思います。

しかしこの状況下で、指導員への指導にまで手が回るとは到底思えないんですよね。
誤解を恐れずにいうなら《ノルマをこなすようにとにかく授業をする》という学校が増えてしまいそうで、そこが懸念です。

クラスの生徒数を減らせたら

分散登校という意味でも、家庭の状況が複雑な子もいますからいつも以上にていねいなケアを・・・という意味でも、1クラスが20〜30人なら、かなり対応しやすいと思います。

しかし実情は、40人前後・・・。

元勤務校では、高校生とはいえ43人クラスなんてこともありました。この状況下での大学入試の進路指導のことなど考えると、ゾッとします。

《多くの人数を指導する力》は指導力の中の1つではあると思うけれど、必ずしもイコールではないとわたしは思っています。

押さえつけて、怒鳴って、
40人を静かにさせている
先生なんかもいらっしゃったり
しますが・・・・・・・・ねぇ。

このことについて検索すると、現役の先生方の悲痛な叫びツイートが散見されました。
オンライン?え、再開?というぐちゃぐちゃな状況の中で、本当に大変だとお察しします……。

でも仮に、いきなりクラスの人数が半分になったとして、それに合わせてすぐ動けるレベルの教員が倍、存在するのか?っていうと……いないんだろうなぁということも同時に思ってしまいました。

オンライン授業は継続?

多様性を言い出すとキリがない部分はあるのですが、こんな意見もあるようです。

通常の授業では手を挙げられない子どもが、オンラインでは、よく発言してくれるようになったというケースは少なくない。学校ではそれまで一言も発しなかった子どもの考えを聞くことができるのは、教師にとってとても重要なこと。また、場所を問わずに学習ができることから、オンラインでの授業は、不登校である子どもを支援することにもつながる。

https://ddnavi.com/review/619412/a/

オンラインのスタイルにもよるのでしょうが(全員の顔が見えているのか?など)、今までよりも安心して発言できる子がいるというのは、考えさせられる要素ですね。

毎日の小テストは学習の効果は高いが、教員にとっては、小テストの用紙を作り、回収してチェックし、成績をExcelなどにまとめるといった手間が日々重くのしかかっていたという。だが、アンケートフォーム機能で小テストの設問を設定すれば、生徒が学習して入力した答えが自動的に採点されて、成績がデータとして確認できる。設問さえ作ってしまえば、その後の手間はほとんど掛からない。すぐに理解状況などを分析することができるので、結果を授業に反映しやすいようだ。

https://ddnavi.com/review/619412/a/

たしかに、日々の小テストをデータ管理できたらとっても効率的ですね。

ただ、担任として漢字テストや英単語テストの監督する立場であったわたしは、静かな教室の中でテストを解く時の様子を見て、メンタルの不調を察知する場面は何度かあったんですよね。
それがオンラインでもできるかな?という疑問はあります。

本書によると、ボタン一つで板書ができることで35%ほどの時間が短縮できるのだ。では、その時間を教育のためにどう活用していくのか。休校中の教育について考えるのはもちろんのこと、新型コロナウイルスを乗り越えた後の学校教育についても、考えていかねばならない。

https://ddnavi.com/review/619412/a/

短縮した時間を、どう有効活用するか?パパッと作業ができないタイプの子は置いてけぼりにならないか?そこは気になるところです。

また、ずっと画面を見つめる辛さもあり、オンライン授業を50分受けるというのはなかなか難しいようです。登校できるようになったからオンラインは終わり!じゃなくて、リアル授業とオンライン授業のいいとこ取りができるといいですよね。

おわりに

議論され始めて1ヶ月経ち、今年度の9月入学導入については見送られました。
しかし完全に消えたわけではありません。

実は現高校3年生の受験に関する情報が案外流れてこないところが心配なのですが、9月入学説の今年度の導入はないと明言したのは、ある意味受験への影響もあってのことかなと思っています。
入学時期によっては、2021年冬に入試が実施されないかもしれませんでしたからね。

ただでさえ共通テストが新型入試になるという不安な中、相当困惑していることでしょう。
不安を早く取り除いてあげてほしいです。

追記:高校3年生の受験に関して現状をまとめてみました。続きの記事としてぜひご覧ください。
関連 9月入学断念。やっと入試の話が進む!

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