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オンライン授業と映像授業の違いとそれぞれのメリットデメリット!コロナ禍での実施状況は?

コロナ禍COVID-19禍中学校高校大学オンライン授業に関する教育ニュースまとめ 学校の先生
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こんにちは。
元美術教師のうさぎ先生です。

2月末の一斉休校の影響で卒業式も無くなってしまい、生徒とお別れができないまま、うさぎせんせいは退職となってしまいました……。

そして寂しい気持ちを抱えたまま新年度になり、今度は緊急事態宣言が出されました。
始業式を実施できた学校であっても、その後休校しているところがほとんどなのだとか。

そんな状況下でさまざまな報道を聞きながら、教育現場について気になることはいろいろあるのですが、今話題の映像授業やオンライン授業というものについて情報を整理していきます。

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そもそも、映像授業って?

映像授業のパイオニア

映像授業といえば、東進ハイスクールです。
わたし自身は通ったことはありませんが、とても有名な塾ですね。

映像授業の開始は、なんと1991年なんだとか。
約30年前・・・まさに先駆けですね!

東進の歴史と映像授業の特徴について、分かりやすく書かれたインタビュー記事がありました。

「いつでもどこでも誰にでも最新にして最高の教育を」という目標を掲げてスタートした東進は、いち早く授業を映像化し、全国どこの地域にいても、生徒さんがいつでも自分専用の個別のブースで受講できるシステムをつくりました。

http://www.iwasakishoten.site/entry/toshin/eizou

人気講師の授業を定員で断られることがない、というのはいいですね。「部活を途中で切り上げて塾に行かないと」なんてことも減りそうです。

また、録画された映像だからこそ、見たいところまで巻き戻したり一時停止したりできるという意味では、生徒が主体的に学べるような気がします。

でも、こんな困難もあったそうで。

講師にとっては自分が行っている授業をいくらでも複製されたら困るという権利に関する問題がありましたし、また、講師と言えど万が一にも間違えたことを教えてしまったら、それが永久に残ってしまうという不安もあったと思います。そういった不安を一つ一つクリアして実現にいたりました。

http://www.iwasakishoten.site/entry/toshin/eizou

たしかに、普段の授業でももちろん気をつけて発言しているとはいえ、それが形として残るとなると話はまた違ってくるなぁと思います。

映像授業の2つのタイプ

インタビューを途中まで読んで気付いたのですが、世の中で使われる「映像授業」という言葉が指すものには、2つのタイプがあるようです。

①講師が予め録画した映像を、一方的に流す。生徒は自分のペースで視聴可能。
②講師が、別の場所から複数生徒に対して生放送をする。生徒と会話可能。

特徴を詳しく見ていきますね。

授業を予め録画する①のタイプ

①講師が予め録画した映像を、一方的に流す。生徒は自分のペースで視聴可能。

メリット:生徒のペースに合わせやすい

東進さんでは当初は②であったけれど、より生徒のペースに合わせやすい①に移行していったそうです。生身の講師も塾にいるから、①の映像を見た上で質問ができるんですね。

自分にぴったりの授業を自分のペースで個別に受講できるということが最も大きな変化だったと思います。通常の予備校の授業は週に1回と決まっていて、自分がもっと先に進みたいと思っても、カリキュラム通りに進んでいきます。例えば、高3の生徒が、高1英語を復習したいと思っても、カリキュラムに沿うと1年かかってしまい、受験までにとうてい間に合いませんよね?
しかし映像による授業ならば、今日の続きを明日、そして明後日と毎日受講することもできるので、通常1年かかる授業を1ヶ月でマスターなんてこともできるんです。

http://www.iwasakishoten.site/entry/toshin/eizou

自分のペースや目標をある程度把握できている生徒にとっては、とても便利なツールだと感じました。

メリット:EテレならネットがなくてもOK

NHKのEテレで放送されている『高校講座』や道徳教材の『がんこちゃん』も、①に当てはまるかなと思います。自分(生徒)の意見を代弁してくれるような、よく質問を投げかけるキャラクターや生徒役の役者さんがいることが特徴ですね。

公式HPには放送スケジュールが掲載されていますので、印刷しておけばネット環境がない生徒でも放送スケジュールを把握できますね。

 
NHK高校講座美術1
 

実は元勤務校でも3月末の時点で、全生徒に100%ネット環境があるとは限らないというところが課題になっていました。

ユネスコ=国連教育科学文化機関は21日、世界で休校の影響を受けたすべての子どもたちのうち、43%にあたる7億600万人は自宅にインターネット環境がないという推計を発表しました。またおよそ半分の8億2600万人は、家庭にパソコンがないとしています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200423/k10012401501000.html

世界の話なので参考程度ということでにはなりますが、43%がネット環境なしだそうです。
そういう意味ではこのNHKの講座のようなテレビでもネットでも同じ映像を視聴出来ることは、メリットとして挙げられますね。

デメリット:生徒に主体性が求められる

自分のペースや興味に合わせて視聴を調整できるというのは、とても便利そうに思えます。

しかし逆にいうと、明確な目標はなくなんとなく視聴している生徒にとっては、何をどう工夫すればいいのか分からないかもしれません。

「見たけど……で??」って。

そこから「手持ちの参考書でいうとここだな」とか「昨日の映像のこれとつながるな」とか「ここが分からないからもう一度見よう」などの選ぶという行動には、案外主体性が求められるのです。

家庭学習を想像すると、保護者の方にとって「うちの子、映像授業見てるけど成果が出ないなぁ」と思える場合って、そもそもこの選ぶことを練習している段階なんじゃないかなぁとわたしは考えています。

「次は何見るの?なんでそれを選んだの?そうなんだ、だから選んだんだ。なるほどねー」「映像と同じような単元、自分で見つけたんだ。すごいね!」という会話になれば選ぶ力が育まれていっていいなぁと思いますが、保護者の方もなかなかお忙しいでしょうから難しい気はします……。

デメリット:双方向性を持った会話ができない

通常の対面授業であれば、教師は相手の理解度や雰囲気に合わせて声の調子を変えたり、同じことを繰り返し説明したりすることが可能です。

しかしこの①の場合は教師からは一方的に、全員に同じものを提供することしかできません。

「ちょっと巻き戻して、この30秒間の説明をもう一回見たらわかるのに」というチャンスを知らせてあげることが出来ないので、1人で視聴している生徒は逃してしまう可能性が非常に高いです。

もう、想像しただけで、ヤキモキします……。
これのチャンスを逃すことを防ぐために、東進の教室には生身の講師が居るのですね。

教える側と教わる側とが、双方向性を持った会話ができないことが大きなデメリットと言えそうです。映像に加えて、家族や生身の講師のサポートがあれば、ある程度は払拭できそうです。

今話題なのは、②の生放送タイプ

②講師が、別の場所から複数生徒に対して生放送をする。生徒と会話可能。

緊急事態宣言後の休校中に話題なのは、この②の方法だと思います。映像授業というよりは、オンライン授業と呼ばれているようです。

メリット:双方向性を持った会話が可能

いわゆる生放送なので、カメラや通話機能を活用することで生徒はすぐに質問ができますし、教師は適宜アドバイスをすることができます。

生徒の状況を見てある程度は授業のペースを変えることも可能ですし、場合によっては未来の授業内容の予定を変更することもできます。

従来の授業に近い形で進められることが、①の予め録画された映像にはない大きなメリットです。

デメリット:私生活が見えてしまう・周囲の様子が見えない

オンライン授業をする方も受ける方も慣れていないことから、Twitter等に様々な意見が出ていました。

教わる側としては、普段は知られることがないはずの私生活が見えてしまうことが難点です。

オンライン会議やZoom会議の需要で上半身の服だけ売れ行きがいいなんてニュースがありましたが、なるほど大人だけの問題ではありませんね。

「好きな子の部屋が映っちゃったらどうしよう」と考える生徒もいると思います。思春期にはそわそわしてもう授業どころじゃないのでは……なんて想像してしまいます。

こちらは保護者の方の意見です。「周囲の子の様子を見て出来るようになる」が、オンライン授業だと難しいとのことです。

たしかに、他の生徒の動きを見せあうという場面を教師側が意識的に作らなければ、低年齢層など言葉での状況把握が難しい場合には特に、手が止まってしまうかもしれません。

たとえばノートをカメラに向けて点検なんてことも出来るでしょうが、「他の子にノートを見られたくない!」という生徒がいることは想定できますし、どこまでオープンにしていくのかのバランスが難しいですね。

見ないでほしいところは見えちゃって
見たい部分は見えないって感じですね

デメリット:一から教材作りが必要

ほとんどの学校で「オンライン授業用に新しくスライドを作る」必要が出ているようです。

これまで使っていたスライドをそのままというわけにもいかず、直接対面できないからこそ、よりわかりやすく、もうちょっとこういう工夫を……とついつい思ってしまうというお話ですね。

また、学生だけではなくその家族も閲覧するかもしれないと思うと、また違った視点で工夫を考える必要性があるかもしれません。学年が変わったことで映像で初めての対面になっている状況も多いでしょうし、お互い構えてしまいますね。

これまで板書タイプだった先生が、これを機に授業をPowerPointに切り替える、ということも起きているようです。こうなるとまさに一からですから、かかる時間は3倍どころではないかもしれません。

8割の大学がオンライン授業実施・検討

文部科学省の調査では、全体では8割の大学が何らかの形でオンライン授業の実施を決めたり、実施を検討したりしているということです。

https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/428098.html

小学校〜高校に比べると、大学は早いですね。
とはいえ、取り組みがスムーズに進んでいるわけではないようです。

そもそも日本の大学の中で、こうした授業に取り組んだことがある大学は、25%にとどまるという実状があります。

https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/428098.html

コロナ禍以前にオンライン授業の経験がある大学は、4分の1なのですね。

ほとんどの大学は、すべての学生を対象にオンライン授業を行うことは想定していませんから、サーバー自体がそれを前提とした整備がされておらず、容量オーバーでトラブルを起こすことを懸念する声があります。

https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/428098.html

その4分の1の大学であっても、すべての学生を対象に実施となるともちろん想定外なのでしょう。
大学は非常勤の先生も多いでしょうし、ネットに明るい先生ばかりだとは考えにくいです。

教育実習は受け入れ先の小中学校、高校の休校が続く中で、1学期中の受け入れの目処は立たない状況です。いずれもオンラインでは行うことができません。ほかの授業を先に行うことにも限界があり、早くも答えに行き詰まっています。

https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/428098.html

教育実習や理工系の実習など、学生が自宅で行うわけにはいかない授業も多いはずです。

また、Youtubeを介した医療系や美術系の映像だと人間の裸体が映る場合があり、BANされるケースもあったと聞きます。なるほどといったところですが、必要な裸もあるわけで……。
パスワードが必要な番組だけは解禁されたり、個別の申請で解禁されたりしていくのでしょうか。

学生自身がTwitterなどで発信することもあり、大学に関する情報は割と掴みやすかったです。
一方で小学校〜高校ではどうなっているのかというと、オンライン授業実施の割合はガクッと下がってしまっていました。

小学校〜高校では、たった5%

文科省のデータを参照しました。
新型コロナウイルス感染症対策のための学校の臨時休業に関連した公立学校における学習指導等の取組状況について(令和2年4月16日時点)PDF

教科書や紙の教材を活用した家庭学習は100%、それに対してテレビ放送を活用した家庭学習が24%です。前述の映像授業①の感じですね。

そして②にあたる同時双方向型のオンライン指導を通じた家庭学習は……なんと5%です。

そもそも教科書を配布できていない学校の割合も、同じく5%とのことでした。

これが4月21日現在の情報なのですが、そしてこの記事を書いている間に次の情報がアップされました。

文部科学省は、小中高校生の家庭学習の充実に向け、パソコンやタブレット端末を使って出題、解答するオンライン学習システムの開発に乗り出す。今年度中に実証研究に着手し、将来的に教員が作問・出題から成績評価まで活用できる環境づくりを目指す。

https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20200427-OYT1T50020/

実用化されるのはいつになるのかわかりませんが、どんどん動きが進んではいるようです。
先生側の勉強が相当必要になりますね……。

先生に求められるスキルが変わってくる?

AIが先生になっちゃう?

実はこの事態になる前に、元勤務校でデジタル教科書の導入をしたときに「先生なんて、もういらなくなっちゃうんじゃないかなと思う」と仰る先生が複数いました。

その時はまさかこんなことになるとは想定していませんでしたが、①のような予め録画した映像授業という意味でした。「ロボットやAIが、先生になっちゃうんじゃない?」という感じですね。

もし録画授業ばかりを使うようになるとしたら……と少し考えてみました。

生徒を観察する機会がなくなる?

通常の対面授業の際、教師は生徒の様子を相当観察していると思います。
描いたり作ったりする表情から、変化がわかる機会がとても多いんですよね。美術は情操教育だから余計かもしれません。

そこには今抱えている悩みを窺わせる表情があったり、過去のトラウマを匂わせるものであったり、悪い変化ばかりではなく「粘土に目覚めた!」みたいなよい変化もあったりして。

美術とは直接的に関係のないことであっても、担任と連携してサポートに繋げていく場合もありました。

うさぎせんせい:「今日の授業中、いつもと表情が違っていて。様子見てみてください。」

担任の先生:「終礼で声かけてみたら、実は家族と大喧嘩してたみたい!」

なんてこともありました。

生徒と対話するスキルを、磨きにくくなる?

美術には、共通する正解がありません。

「それぞれの生徒の中にある、異なる正解を一緒に探し出す」ような教科特性がありますので、その場の雰囲気を共有することや双方向性を持った会話はかなり重要です。

これが映像授業になって生徒を観察する・接する機会が少なくなると、「この子が作りたい色はどんな色だろう」「こういう作風好きそうだな」と察知するスキルを磨くことも難しくなるのではと予想できます。
録画した映像授業でなく生放送タイプであっても、生徒と教師と作品を同じ場所で共有できないことは大きなビハインドです。

筆運びとかボンドの塗り方とか、テクニック的な部分で動画を使うことは効果的だと思うのですが、生徒ごとの作品テーマ選びの段階では特に苦労しそうです。

これから新しく先生になる人には
相当高いハードルになると思います

おわりに

「学校に通わず、塾だけでいいんじゃない?」とか「通信制の学校ばっかりでいいんじゃない?」という声も聞かれます。こうなってくるとなかなか壮大な話題になってきますね。

今回の記事では教師目線での意見を織り交ぜながら映像授業・オンライン授業に関して書きましたが、もし自分自身がオンライン授業を受けることになったらということも考えてみました。
続きの記事としてぜひご覧くださいね。

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