こんにちは。
元美術教師のうさぎ先生です。
わたしは私立の中高一貫女子校に6年通い、母校とは別の私立の中高一貫女子校で8年勤めました。
今回は、わたしなりに思う私立教員の働き方の特徴を、私立でよかったことと公立の方がよかったかも…と思ったことに分けて詳しくご紹介します。
- 教職を目指している
- 私立の教員採用試験に興味がある
- 公立教員からの転職を考えている
こんな人におすすめの記事です。
もちろん学校法人や地域によって大きく異なる部分はあると思いますが、一例として参考にしていただける内容になっています。
私立中学校・高等学校で働くことについて興味がある方は、ぜひ最後までご覧くださいね。
私立の中学校・高校で働くメリット
①転勤・異動がない
公立だと異動のたびに「自宅から遠い学校になるかも…」「どんな雰囲気の学校に配属されるか分からない…」という心配がつきまといますが、私立の場合は基本的に異動(転勤)がありません。
私立の場合は公立とは違って各学校ごとの採用なので、学校への通勤時間や雰囲気を確認した上で、採用試験に応募することが出来るんですよね。
系列校への異動が生じる場合もありますが、かなり稀なケースだと思います。
わたしの母校の英語の先生は
異動して、系列校の教頭に
なっていました。栄転ですね!
無期雇用の専任教諭であれば同じ学校で何十年と勤務することも可能なので、「担任の先生、ママと同じだった!」なんていうほほえましい場面も。
教科の研究室や準備室がある学校では、先生の棲み家のようになっていることもよくありますよ。
転勤がないことが影響するのか、20代のうちから自宅を建てている先生が多いなぁとも感じました。
長期のライフプランが設計しやすいですよね。
②自分の母校に勤めることができる
わたしは勤務校と出身校は異なるのですが、出身校に教育実習でお世話になった縁で教員採用試験を受けて、そのまま就職することになったという先生を複数知っています。
中には、初めから「母校の先生」になることだけを目指して教員免許を取得する人もいるのだとか。
母校だからと言って、もちろんフリーパスというわけではありませんけれどね。
とはいえ採用する側としては学校の教育理念を理解している卒業生というのは信頼できるし頼もしいし、何よりも自分達の指導の結果として立派な先生に成長した様子を見るのは誇らしく嬉しいみたいです。
自分が通った学び舎で後輩を育てることができるというのは、自治体ごとではなく学校ごとに採用される私学でないとなかなか叶わない、かなり独特な環境であると言えますね。
③夏以外にも教員採用試験がある
少子化のこの時代において単純な教員増というのはすごく珍しいので、基本的には各学校で欠員が出ることで募集がかかるんですよね。
ここは毎年夏に決まって教採が実施される公立とは大きく異なるところなのですが、つまり夏以外にも教採がある場合があるっていうことなんです。
大体5月ぐらいまでに退職が決まっていれば夏休み中に採用試験が実施されるようですが、それ以降、夏休みが明けてから退職を希望する先生が現れた場合は12月末頃に試験が実施されることになります。
私学にとって1月〜2月は入試期間でものすごく忙しいので、年末を逃すと2月末〜3月頭の年度内ギリギリに試験を実施という感じですね。
地域によってあらかじめ実施される適性検査の受験が必須であったり、学校によっては教採の日程を限定せず都度試験を実施し、適当な人材が現れ次第締め切りますというスタイルをとっている場合もあるので、公立の教採との併願を狙っている人は働きたい私立学校の採用情報をしっかりチェックしておく必要があります。
④学習意欲が高い生徒が多い
私学と一口に言っても、本人の希望校ではなかったり、滑り止め校だからとやる気が出なかったり、学校選びの目的が勉強ではなく部活動であったりする場合もあるので、一概には言えませんが…
基本的には望んで入学している(場合が多い)ので、生徒の学習意欲が比較的高いことが多いです。
高校は公立の方が偏差値が高い地域も割と多くありますから、特に受験を経て入学する小学校・中学校に言えることですね。
高校入試がないことを理由にやる気がない中学生になってしまうという学校もあるそうですが、わたしが知る限りでは内申書に怯えずにおおらかにやりたいことに邁進している生徒が多いという印象です。
中3の後半までしっかり部活動を満喫できることが、学習のストレス発散になる場合もありますしね。
「私立の経験しかない先生は、多様な生徒を抱える公立では使い物にならない」なんて厳しいことをおっしゃる先生も一部にいらっしゃるようですが、意欲的な集団を飽きさせずに伸ばすスキルはそう簡単に会得できるものではないと思っています。
⑤いろいろな地域の生徒と関われる
学校の所在地にもよるとは思いますが、徒歩通学から特急電車通学まで、とにかく生徒の行動範囲が広いんですよね。
学費が高い私学を選んでいる時点である程度以上の経済状況のご家庭が多いとは言えますが、それでも家庭環境は千差万別でしたし、一つの地域の子どもたちだけと関わる公立の中学校とはかなり異なるんだろうなと感じていました。
地元のお祭りの話や小学校での思い出話がみんなそれぞれ違うので、それが中学生に大切な他との違いを知る・気付く・認め合うことを学ばせるよいきっかけにもなりました。
また、通塾時代の名残りもあってか電車などで遠くに行くことにあまり抵抗がないので、少し遠い美術館や図書館でも興味があればとことん足を伸ばすという習性がある生徒も多くて、それがまた学習意欲に繋がるのかなとも思いました。(ライブ遠征やオタ活での行脚もあるようですが…笑)
⑥設備が整っていることが多い
学校法人の経営状態にもよりますが、教材や部活動に関する予算は多いと思います。
上限がないわけではありませんでしたが新しい教材へのチャレンジもしやすく、副教材やドリルの導入もしやすかったです。
他にはトイレの整備やPC周りの機器の新しさなどは入試広報において対外的に伝わりやすくアピールがしやすい部分ですから、優先的にお金をかけられている場合が多いと感じます。
保護者の方も、教育に関する出費には寛容な方が多いんですよね。
公立だと「美術で絵を描くモチーフとしてにんじんを各自持参するように」なんて持ち物の指示は、なかなか受け入れられないと聞きますから…。
⑦残業代や手当が充実している
こちらも学校法人の経営状態によるかと思いますが、わたしの勤務先では働き方改革以降、残業代が支払われるようになりました。
入試前や成績処理期間などの特に忙しい時期は終電を調べながら仕事をする日もありますから、その労働に対して対価が支払われるのは素直に嬉しいことです。
過剰な残業をしなくていいことが
一番の望みではありますけれどね…
他にも休日の部活動や生徒を引率しての行事に対する手当もありましたが、友人の勤める学校とわたしの勤務校では手当の金額が倍近く違ったので、私学と言っても学校によってさまざまみたいです。
給与やボーナスも経営状態次第ですね。
お金といえば、かつては私学カードという新卒でも無料で持てるゴールドカードがありました。
退職後も所持できるので私学教員経験者ならではのお得なクレジットカードだったのですが、残念ながら2021年度から年会費が必要になってしまいました。
⑧副業が認められやすい
必ずしもオールOKというわけではなく各校の就業規則次第とはなりますが、私学はある程度の副業が許可されている学校が多いようです。
株や投資をやっている先生、地元の催し物の指導や本の執筆や展覧会出品、テレビ番組出演などによる報酬の受け取りがある先生など…
わたし自身が生徒である時も働いている時もあまり意識していなかったのですが、副業をしている先生って案外多かったんですよね。
公立の先生だと公務員になるので、副業の内容によってはダメなものがあるらしいです。
実際は、副業をやる時間と体力が
どれだけあるかは別問題ですが…
必要に応じて確定申告もお忘れなく!
私立の中学校・高校で働くデメリット
①環境が変わらないので、人間関係に悩むと辛い
自分が辞めない限りは基本的に同じ職場ということになりますので、変化が生じにくく、もし教員同士でトラブルが起きたとしても環境を変えることが困難です。
メリットに挙げた「転勤がない」は、デメリットでもあるんですよね。
公立なら、数年経てば自分か相手が異動になるだろう…と思って多少は我慢や譲歩が出来るかもしれませんが、私立はそうはいかないのです。
私立って公立ほど循環しないので、何十年もいる名物教師みたいな存在がいるんですよね。
その名物教師とあなたとの考え方が異なっていると、かなり過ごし辛いと思います…。
一般的な会社であってもそれはそうだと言われそうですが、生徒(子ども)の前で他の先生の愚痴を言うわけにはいかないという部分は実は教員ならではのガス抜きのしづらさであり、苦労する要素だと言えます。
大人ばっかりの職場であれば
勤務中にも仲間内で上司の愚痴を…
なんてこともあるかもだけど、
生徒の前では先生同士はチーム。
これを崩すと生徒にも保護者にも
安心して過ごしてもらえません。
「○○先生には、いいって言われたのに!」
「△△先生なら、やってくれたのに!」
他の先生との指導方針の違いによって、生徒からのこんな言葉を受けることも。
合わないと感じる先生が複数いる環境なら、もしかするとその学校自体とあなたの指導観が合っていないのかもしれません。
②うっかりエピソードが伝説として残る
「あの先生は昔こんなことを…」という噂話のようなものが、先輩から後輩に脈々と語り継がれます。
その内容は新人の頃の失敗だったり、授業中のハプニングだったり、街でデート中の様子だったり…。
異動がないから断ち切られないんですよね。
たった一回のうっかりエピソードだとしても語り継がれてしまうので、要注意です。
実際わたしの母校では、わたしよりずっと上の先輩から受け継がれていたとある先生の伝説のエピソードが、教育実習で出会った生徒(わたしより10歳近く年下)にも知られていました…笑
世界の伝説ってこうやって
代々受け継がれるんだなぁ…と
実感することが出来ます。
そして大体が、失敗談などの
よくないエピソードなんですよね…
③募集がないと転職できない
夏以外にも教採があるのはメリットなのですが、採用試験がない年もあるというのがデメリットです。
私立の採用試験は各学校で欠員が出て初めて募集がかかるので、産休や病休の代理講師、非常勤講師といった有期雇用ならまだしも、無期雇用の正規教員としての募集においては前述したような名物教師がいる限り、何十年も募集が無いなんてこともよくある話なのです。
特に美術や技術といった副教科の場合は正規教員が一人だけという学校も少なくありませんから、これは本当にタイミング次第だなと思います。
たとえ勤め先と指導観が合わないと感じても、生徒に語り継がれる伝説に耐えられなくなっても…転職先の私学を見つけることが難しいんですよね。
実際、勤務校(関西)で採用試験の担当をしていたときも、わざわざ関東や東北から応募なさっている方を複数見かけました。
もちろん大学が遠方なだけで地元は関西だという新卒の方もいらっしゃいましたが、多くの場合は近隣の地域で美術教師の募集を見つけるは難しいと判断してのことでした。
そこまでするなら公立を受験した方が手っ取り早いのでは?と思ってしまいますが、それでも私学で勤務するメリットを選びたいっていうことなんですかね…
最近だと英語科教師専門の転職支援もあるようで、私学への転職を希望している先生にはおすすめのサービスになっていますよ。
私学の先生の転職は、
ほんとタイミング次第すぎて
難しいんですよね…!
④「卒業生の先生」とはギャップがあるかも
これもメリットの裏返しと言えることなのですが…卒業生の先生が過ごしやすいということは、その逆はどうなの?という話です。
「母校じゃない先生」からすると、先生同士の関係性が閉鎖的な雰囲気に思える場面もあるんですよね。
教職に限った話ではないかもしれませんが、もともと知り合い同士の人や卒業生同士の人って話が弾みやすいですし、阿吽の呼吸じゃないけど…なんか独特なんです。
卒業生だからと言って必ずしも母校に対しての想いが同じかというとそういうわけではありませんが、母校に帰ることを選んでいる時点で、ある程度先生との仲も同級生との仲も良好であることを意味していますよね。
同期で着任した先生がやけに年配の先生と親しげだと思ったら卒業生だった、なんてことはよくある話みたいで…「母校じゃない先生」は着任早々いきなり疎外感を持ってしまうという…
こういった部分も含めて、
私学の場合は先生同士の
人間関係が働きやすさに
大きく影響すると思います。
⑤フォローすべき生徒の行動範囲が広い
いろいろな地域から通う生徒がいますので、電車の遅延や災害があった時に把握しなければならないエリアが広いのです。
学校の所在地は晴れていても、その子の家では浸水するほどの雨が…なんてこともあるんですよね。
学校によって頻度はさまざまでしょうが、家庭訪問が必要になった場合に遠いことがあるというのもなかなか大変なところです。
主要な乗り換え駅の定期券を持っている生徒も多いので、休日に繁華街で生徒とばったり出会ってしまうとか、飲食店に入ったら生徒が禁止されているはずのアルバイトをしているとか、スーパーで半額のお弁当を買っているところを見られていたとか…
わたし自身が高校生の頃、
数学の先生が下着屋さんで
買い物をしている場面に
遭遇してしまったことがあって
すごく気まずかったです…笑
デメリット②の伝説が語り継がれる話にも繋がるのですが、すぐに写真を撮られるし…先生ってちょっとした芸能人だと言っても過言ではないんですよね…
⑥入試業務や広報としての仕事が欠かせない
生徒がいないと成り立たないのが私学ということで、どうしても入学者を増やすための広報活動が切り離せないんですよね。
未来の生徒・未来の保護者へのていねいな説明・対応が必要になるので、学校の特色を客観的に見つめるよいきっかけになるとは思うのですが…すごく気を使うし、先生としてのスキルとはまた違ったものが求められるので疲れるのは間違いないです;;
校務分掌が広報になると特に、大きなホールにブースを出して説明会をしたり塾を訪問したりと営業活動のような力が求められますし、休日出勤が必要な場合もあります。
別の分掌であったとしても校内で実施される入試説明会やオープンスクール、そしてもちろん入試本番には教員全員で一丸となって取り組むことになりますので、私学に勤める以上はある程度覚悟しておいた方がいいです。
⑦教員研修が少ない
これは人によってはメリットだと感じるかも?それほどに公立はとにかく研修が多いそうです。
公立と私立の両方を経験した先生が、「さまざまなスキルアップにつながるとは思うけれど、研修に向けた指導案作りが大変だったり、興味がなくても受けなければならなかったりして、その上に教員免許更新講習を受けたいだなんてとても思えない」とよく話していました。
教員免許更新制は2022年7月1日に廃止となりましたが、公立は各教員の研修受講記録作成を義務付ける新たな研修制度が始まるという話もあります。
一方で私立の場合は教員全員で取り組むものが学期に一回程度あり、それ以外は自ら研修を探して申し込むといったスタイルでした。
興味がある研修に任意で参加できるわけですが、なんというか研修を受けることを想定された日々のスケジュールではないわけです。
授業や分掌の会議、部活動に穴をあけてまで…という状況になるので、結局参加できない場合も多く、わたしは教員の向上心を生かしにくい仕組みだと感じてしまいました;;
いっそのこと必須の研修だと
言ってもらえた方が、
参加しやすかったなぁと思います
私学の教師が向いているのはどんな人?
私学は学校ごとにかなり特色があり、かつ転勤がないので、勤務する学校の先生・指導観・生徒との相性によって働きやすさが一変すると言えます。
進学校のA学校では働きづらかったけれど、部活動重視のB学校だとのびのび働くことができた
大規模校のC学校ではうまく学級運営できていたのに、一人ひとりにていねいな対応が求められる小規模なD学校では通用しなかった
こんなケースもあるんですよね。
公立だって同じだよと思われるかもしれませんが、転勤・異動がないという点がやはり大きいです。
学校のHPやパンフレットだけではなかなか判断しづらいかもしれませんが、「ここで40年働けるかな?」と想像してみた時にご自身の思い描く教師像にマッチした学校を選ぶことをおすすめします。
あとはメリット・デメリットとは少し異なる視点で言うと、私立は宗教がある学校も多いです。
わたしの友人の勤め先はキリスト教系列の私立学校なのですが、正規教員の場合は教会で洗礼を受けた人しか採用試験を受けることができないそうです。募集要項をしっかり確認してくださいね。
おわりに・まとめ
今回は私立の中高一貫女子校に6年間通い、別の私立の中高一貫女子校で8年間勤めたわたしなりに思う私立教員として働くメリット・デメリットについてご紹介しました。
これから教員採用試験を受ける人や公立との併願を考えている教職志望の学生さんにとって、少しでも参考になると嬉しいです。
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