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免許外教科担任制度はなぜなくならない?しくみと現状の問題点について解説します

免許外教科担任制度の問題点は情報の授業など副教科での常態化教員免許制度

こんにちは。
元美術教師のうさぎ先生です。

先日、文科省が特別免許制度の積極的な利用を促したことが大きな話題になりました。

一般的に「教員免許状」と呼ばれるのは普通免許状ですが、この普通免許状がなくても先生になれる制度がいくつかあります。

教員不足が深刻化していると言われている今、人手を確保するために注目されているんですよね。

このブログにも3つの制度について詳しく紹介した記事がありますが、これらの制度を用いることで普通免許状を持たない人が先生になれたり、中学校の免許しかないけれど小学校の担任教諭になるというような持っている免許状とは異なる学校種の先生になれたりします。
関連記事はこちらから→ 特別非常勤講師について特別免許状について臨時免許状について

さて、今回は少し毛色が異なる、校内ですでに他の教科を教えている教諭別の授業も持つことが出来るようになるという免許外教科担任制度の仕組みや問題点について、文科省や自治体のHPを参照しながら細かく詳しく解説していきます。

たとえば…
数学の免許を持つ先生が、
加えて情報の授業も行う」
といった感じですね。

この免許外教科担任制度、昨今の教員不足から制度の利用が増加している・常態化されていると言われ、さまざまな問題点が指摘されているんですよね。

  • 免許外教科担任制度の仕組みが知りたい
  • どんな場合に使われているのか知りたい
  • 特別免許臨時免許との違いが知りたい
  • 免許外の教科を受け持たないかと打診されている
  • 免許外教科担任制度が問題視されている理由を知りたい

免許外教科担任制度についていろいろ知りたいという方は、ぜひ最後までご覧くださいね。

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免許外教科担任制度とは

制度の概要

免許外教科担任制度とは、中学校、義務教育学校の後期課程、高等学校、中等教育学校、特別支援学校の中学部もしくは高等部において、ある教科を担当すべき教員を採用することができないときに限り、都道府県教委に申請のうえで当該学校の普通免許状を有する教員に他の教科を担当させることを特別に認める制度のことを言います。

名称に「担任」とはありますが、俗に言う教科担当ってことですね。

許可の対象は主幹教諭または教諭に限られていて、養護教諭や講師は対象ではありません。

また、幼稚園や小学校は対象ではありません。

教科外担任での週授業時間数は、原則として当該教諭の所有する免許教科の週時間数の2分の1以内とするように言われています。

本来教えるべき教科の授業の妨げにならないようにということですね。

参考免許外教科担任制度:文部科学省
参考免許外教科担任の許可(教育職員免許法)(教育委員会事務局教職員課)|滋賀県ホームページ

普通免許状を持つ先生が対象

免許外教科担任制度は、学校内で特定の教科の教員が不足した際に、すでに勤務している教諭が有する免許状の教科以外の授業も担当しようとする場合に用いられる制度です。

同じく「教員不足」で活用される特別免許状臨時免許状のように「教員免許を持っていない人に対する特殊な免許」を発行して新たな先生を雇用するのではなく、校内ですでに他の教科を教えている教諭が別の授業も持つという形で不足を補うんですね。

どんな時に使われる制度?

かつては教員一人当たりの授業の持ち時間数をならす目的で使われていたようですが、現在は定数内では全教科の免許を持った教員を配置できない場合に使われることがほとんどだと言われています。

教員の定数というのは私立校にしか勤務経験がないわたしにはあまり馴染みがないのですが、義務標準法に基づく標準定数によって、都道府県ごとに置くべき教職員の総数を算定するもののことです。
公式教職員定数の算定について – 文部科学省

たとえば3学級の中学校であれば10.75人36学級の中学校であれば61.0人の先生を正規教員として配置できます。

正規教員の数は、人件費を交付する国の標準例に沿った数となっているということですね。

この数には校長や事務職員なども含まれますので、つまり児童や生徒の数が少ない学校では全教科の先生を正規教員として雇えないから免許外教科担任制度が活用されやすいっていうことです。

他の理由としては、急な病休への対応や特別支援教育や外国人児童生徒への対応が挙げられています。

単位数の少ない副教科で使われるケースが特に多いと言われており、常態化してしまっている学校があることが問題視されています。
公式免許外教科担任制度の在り方に関する調査研究|文部科学省

特別非常勤講師のような、
地域の専門家のスキルを前向きに
教育現場に入れる制度とは違い
後ろ向きな制度なんですね…

どの教科で活用されているのか、次の項目で見ていきますね。

所有免許状教科と免許外担任教科の状況

文科省の2017(H29)年度の統計データによると、免許外で担当する教科としては家庭科・技術・美術(中学校)、情報・公民・工業(高等学校)の順に多く活用されています。

一方で所有免許の教科としては音楽・保健体育・理科(中学校)、地理歴史・商業・数学(高等学校)の順に多く活用されています。

高校の場合は免許外として情報を持つケースが圧倒的に多いようで、すべての免許外担任制度活用数のうちのおよそ3分の1が情報です。

地歴の先生が公民を持つというのは関連性としてなんとなく分かりますが、保健体育音楽の先生が情報を持つケースが少なくないことに驚きました。

自身の単位数の少ない副教科の先生が
別の副教科を兼任せざるを得ない
状況っぽいですね…

文科省のこちらのページに、詳細な数字が記載されています。
公式所有免許状教科と免許外担任教科の状況|文部科学省

わたしの知り合いの英語の先生は急な人手不足で情報の授業を免許外担任制度で受け持つことになりましたが、のちに通信教育で情報の免許を追加で取得していました。

この英語の先生の場合はたまたま情報の分野にも個人的に興味があったらしいので成り立っていましたが、普通に考えたら「英語を教えたくて先生になったのに、情報の授業も持たされる」なんて状況はおかしいですよね;;

免許外教科担任制度が抱える問題点

専門外の先生が教えていいの?

この免許外教科担任制度であれば元々その学校で働いている先生が別の教科も受け持つことになるので、まったく教員免許を持たない人を迎え入れる特別免許状臨時免許状に比べると肯定的な意見もあるようです。

しかし、そもそも根本的に…という話にはなりますが、専門知識を持たない教員が教えることがはたして子どもたちのためになるのか?学習権を保障できていると言えるのだろうか?というところに問題がありますよね。

状況によっては他には当該教科の先生がまったくいない中で、専門外なのに唯一の教科担当者として働かなければならないケースも十分起こり得ます。

いくら研修などで他校との交流があったとしても質の担保は困難であると言えます。

教科担当者の急な退職などで
緊急的に行われるならまだしも
専門外指導が常態化となると

話が別ですね…

本来受け持つ授業の教材研究に集中できない?

たとえば「音楽の先生が免許外で家庭科も受け持つ」という場合、音楽の授業に関する教材研究やテストの作問成績処理に加えて、専門外の教科である家庭科についても同様の業務が重くのしかかります。

他に家庭科の先生がまったくいない場合は、教材発注教科書選定備品の管理についても任されることになり、これは自身の教科である音楽の授業に使える時間が大幅に削られることを意味しますよね。

専門外のことをやるというのはただでさえ時間がかかるものですし、生徒たちに損した気分を味わわせないためにと本来の授業以上の時間や手間をかけて教材研究にあたるという先生も少なくないのではないでしょうか。

教員採用試験を受ける学生が減る?

やりたい授業があって教員を目指している学生の立場で考えると、誤解を恐れずに言えば余計な仕事をやらなければならないわけですよね。

たとえば地元や大学がある場所が免許外教科担任制度の利用が常態化している地域だとすれば、「専門外の教科を持ちたくないから別の自治体の教採を受けようかな…」と考える学生がいてもなんら不思議ではないなと思いました。

熱意ある人材が他の自治体に流れていってしまうというのは、地域にとって大きな損失ですよね;;

副教科・技能系教科が軽んじられている?

単位数の関係もあり、免許外で担当することになる教科のほとんどがいわゆる副教科です。

「免許なんかなくても教えられる」と思っている人はいない…と思いたいですが、美術教師だったわたしとしては副教科を軽んじられているような気持ちにもなります。

保健体育・音楽・美術・技術・家庭
などの技能系教科を「“副”教科」と
呼ぶこと自体が
そもそも
という気もしますがそれはまた別の話…

とあるアンケートでは「将来役に立たなかったと思う教科」一位として選ばれてしまった美術ですが、正解がない教科ですから、授業の目的や評価規準をどう設定するかって結構難しい話なんですよね。

免許を持たない先生だと、ついつい「リアルに描ける=高評価」と思ってしまうんじゃないかなぁ…なんて懸念がありますし、そうなってしまう専門外の先生がいらっしゃっても仕方ないような気もします;;

免許外教科担任が抱える問題の具体例

高知県の公立中学校の約7割で、免許外教科担任による専門外指導

2021(R3)年の年度末に、高知県内公立中学校のおよそ7割で一部授業の専門外指導が行われていることがニュースになりました。

土佐町中学校では専門外の教員が美術と技術の授業を受け持つそうで、記事の中では国語の先生が美術を教える様子が紹介されていました。

上に出てきた教員の定数というのがまさしく関係しており、中山間地域を多く抱える高知県では2020(R2)年度に108校中74校が1学年1学級の小規模校ということで、教員8人で10教科を教えざるを得ない状況が続いているそうです。

教員の複数校兼務も試行されたということですが、変則的な勤務形態では兼務する先生は学級担任を持てなくなりますし、中山間地域を多く抱えるということはそれだけ教員が移動するのも大変だということを意味しますよね。

「へき地巡回指導」と称して取り組んでいる地域も全国的に見ればいくつかあるようですが、高知県の場合はあまり広がらなかったそうです。

週に1単位×3学年という少ないコマ数の募集では、有期雇用の講師もなかなか雇いづらそうですね。

移動が容易な都会であれば非常勤講師として複数校を掛け持ちというのはよく耳にする話ですが、それも難しいのだと思います。

「情報」における免許外教科担任の実態が全国的に話題に

2022(R4)年度より指導内容をより充実させた共通必履修科目「情報I」が新設され、これまで以上に指導体制の充実が求められています。

上の統計データは2017(H29)年度ですから、当時よりももっと情報の先生に求められる内容が増えていると言える状況にもかかわらず「情報」の授業を他教科の教員が任されているケース、つまり免許外教科担任制度の活用が多いそうで、全国的な課題となっています。

2020年度(令和2年度)に文部科学省が実施した調査によると、共通教科情報科を担当している教員5,072人のうち、1,210人が高等学校教諭臨時免許状(情報)や免許外教科担任の許可を受けた者であった。一方、高等学校教諭普通免許状「情報」を保有しているものの、情報科以外を担当している教員は6,064人いた。

https://reseed.resemom.jp/article/2021/12/02/2890.htmlより

情報を教えている先生のおよそ4分の1程度が、本来は情報の先生ではないということです。

そして情報の免許を持っている先生が他の教科を兼任している場合が多く、時間割や持ちコマ数などの関係から情報の免許を持っている先生がいるのに別の先生が免許外教科として情報の授業を受け持っているという、なんともちぐはぐな状況も生じてしまっているのだとか。

情報の授業だけに専念できている情報の先生すごく少ないということになりますね。

わたしは情報科のことを詳しく知っているわけではありませんが、この状況下で、なぜ2025(R7)年度の大学入学共通テストから「情報I」を出題することになってしまったんだろう…と純粋に疑問です;;

現場の実態を知っていたら、
まずはそちらを改善してから
指導要領なり共通テストなりを
合わせていくと思うのですが…

まとめ

今回は、校内ですでに他の教科を教えている教諭が別の授業も持つことが出来るようになるという免許外教科担任制度の仕組みと抱える問題点についてご紹介しました。

問題点をまとめるとこんな感じです。

免許外教科担任制度の問題点
  • 専門外の教科を教えることは質の担保が難しい
  • 本来受け持つ授業にかけるべき時間や手間専門外の教科のために使われてしまう
  • 小規模校で制度の利用が常態化していて、教採受験者の減少理由にもなり得る
  • 制度の利用は副教科・技能系教科に集中しており、特に情報の免外が全国的な課題である

教員免許更新制が2022年7月1日に廃止され、失効や休眠をした免許の活用による人手不足解消が期待されています。

なり手不足をなんとかするために文科省や自治体はいろいろと考えているようですが、今回の話題にあった小規模校への対応などはまた別の手が必要になってきそうですね。

生徒たちのためにも免許外教科担任制度の抱える問題点が少しでも解消されていくといいなぁとは思いますが…元教師のわたしとしては先生になりたい人を増やすことよりも先生を辞めたい人を減らすことのほうが急務なのではないかと感じます。

教員免許や免許外教科担任制度について知りたい方にとって、この記事が少しでも参考になっていたら嬉しいです。

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