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普通免許との違いは何?特別免許状を使って先生になる方法を解説します

特別免許状を使って先生になる方法と活用事例 教員免許制度
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こんにちは。
元美術教師のうさぎ先生です。

先日、文科省が特別免許制度の積極的な利用を促したことが大きな話題になりました。

教員不足が深刻化していると言われている今、教員免許を持っていない人が教壇に立てるようになる特別免許状の授与件数は年々増加しています。

この記事では文科省が利用を促すこの特別免許という制度の仕組みや活用事例、どのような手順を踏めば先生になれるのかについて解説します。

  • 教員免許がないけれど先生になりたい
  • 特別免許取得できる人について知りたい
  • 特別免許があると何ができるのか知りたい
  • 特別免許取得する手順を知りたい
  • どんな人特別免許を活用しているのか事例を知りたい

こんな疑問を持つ方におすすめの記事です。ぜひ最後までご覧くださいね。

特別免許状とは

制度の目的・概要

特別免許状とは
  • 優れた知識経験等を有する社会人を教師として学校現場に迎え入れることにより、学校教育の多様化への対応や、その活性化を図るために授与することができる免許状
  • 都道府県教育委員会がおこなう「教育職員検定」に合格すると授与される
  • 発行した都道府県でのみ効力を有する
  • 有効期限は10年間(→2022年7月の法改正で期限なしに)

1988(S63)年に創設された制度です。

任用しようとする者(都道府県・政令指定都市教育委員会や学校法人等)からの推薦が必要で、「教育職員検定」に合格すると授与される免許状です。

特別免許状を取得した場合には「教諭」として採用されます。

これは普通免許状を持つ先生と同じ待遇を受けられるということですね。

採用後は教員としてしっかり働くことができるように、学年主任や教科主任からの個別指導や教職大学院と連携した研修などが実施されます。

普通免許状への上進

2000(H12)年の免許法改正により、特別免許状を有する教員が、相当する学校の教員として3年以上良好な成績で勤務し、かつ、大学等において所定の単位を修得すれば、普通免許状を取得することが可能になりました。

特別免許状普通免許状へと上進、いわばアップグレードさせる方法があるのですね。

ちなみに普通免許状は先日更新制が廃止になりましたので、10年ごとの更新義務は無くなりました。

担当できる学校種や教科

小学校・中学校・高等学校における全教科と、特別支援学校における自立教科等(理療、理容、自立活動など)が対象です。

なお、小学校の普通免許状は全教科を担任することができますが、小学校特別免許状当該教科しか担任することができません

また、幼稚園教諭の特別免許状はありません。

あくまでも「教諭」ですので、各教科のほかに総合的な学習の時間や道徳、特別活動、生徒指導等も担当可能で、クラス担任を持つこともあるということですね。

どんな人が取得できるのか

「担当する教科の専門的な知識経験又は技能」と「社会的信望・熱意と識見」が条件

「担当する教科の専門的な知識経験又は技能」を有することが条件とありますが、具体的には以下のような人が該当するようです。

  • 民間企業やNPO法人等で教科に関する専門分野の勤務経験がある人
  • オリンピックなど国内外のスポーツ競技における実績
  • 文化芸術に関するコンクールや展覧会での活動実績
  • 博士号を持っている人

大卒じゃなくてもOK!学士要件が撤廃

特別免許状の性格が社会人として培った知識・技能を活用するというものであることから、学歴にかかわらずその専門性を評価することが重要であるという考えのもと2002(H14)年に条件が緩和され、学士要件が撤廃されました。
公式今後の教員免許制度の在り方について(答申) 特別免許状の活用促進:文部科学省

学士である必要がないということは、つまり大学を卒業している必要はないということです。

つまり特別免許状制度を使うことで、中卒や高卒であっても社会人として培った優れた知識・技能を持っていれば先生になれる可能性があるのです。

ただし、“可能性がある”とあいまいな表現にしたのには理由があって…

自治体等の採用条件の中に学士を求められている場合があるからです。

このあたりは要確認ということになりますね。

授与の件数と事例

授与件数は増加傾向

1989(H1)年から2018(H30)年までの延べ授与件数は1478件です。

90年代のうちは0件の年もあったようですが、2003(H15)年から増え始めて毎年二桁の人数になり、2015(H27)年以降は200件前後増加傾向にありますね。

特別免許の性格上、高等学校への授与が多くなっていて、次いで特別支援学校、中学校、そして小学校の順になっています。

授与件数について詳しくは、文科省のこちらのページに記載されています。
公式特別免許状の授与状況:文部科学省
公式特別免許状及び特別非常勤講師制度について:文部科学省

授与の事例

事例としては外国語(英語)が多いようで、外国語を母国語とする外国語指導助手であるALT(Assistant Language Teacher)や翻訳・通訳などの職歴を持つ方に授与されています。

その他には看護師作業療法士音楽隊指揮一級建築士などが例として挙げられています。
かなり専門的な教科が多いようですね。

特別免許は「社会的信望・熱意と識見」を持った「優れた知識経験等を有する社会人」が対象とのことですが、そもそもそんなすばらしい人材であれば既に職を持っているでしょうし…わざわざ教育職員検定を受けて教壇に立とうと思う人はかなり限られる気がします。

授与の事例について詳しくは、文科省のこちらのページに記載されています。
公式特別免許状等の活用に関する事例集~多様な教員が活躍する学校をめざして~(平成28年度):文部科学省

実際に特別免許状で先生になった人

上記ページの中で事例として紹介されているディクセット・ラケッシ先生(英語)は、イギリスでの日本語教師や日本の英会話学校講師、札幌開成高等学校での特別非常勤講師などを経て、現在は常勤講師として私立札幌開成中等教育学校にお勤めだそうです。

また井尻達也先生(数学)は、東京大学大学院の工学系研究科航空宇宙工学専攻修士課程を修了後、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に就職して日本初の有人宇宙施設「きぼう」の開発・打ち上げに貢献したのち、自分の今までの経験を次世代に伝えてより良い社会を築いていかなければならないという使命感から特別免許状の取得に至ったそうです。

現在は、文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクール(SSH)等の指定を受けている京都市立堀川高等学校の教育内容の企画推進・調整に従事されています。

なるほどたしかに「担当する教科の専門的な知識経験や技能」をお持ちですし、「社会的信望・熱意と識見」にあふれた人材という感じがしますね…!

特別免許状で先生になる手順

「働きたい学校」にニーズがあることを確認する

自身の経験やスキル等を踏まえて、「働きたい学校」が公立の場合は学校を所管している教育委員会に、国立・私立の場合は国立大学法人・学校法人にそれぞれ相談します。

特別免許状での採用ニーズがあるかどうかの確認ということですね。

ここからは大きく分けて2つの方法があります。
公式特別免許状授与までの流れ例:文部科学省

(1)免許状の授与権者(都道府県教育委員会)が採用者の場合
(2)採用先の推薦を得て特別免許状が授与される場合

それぞれの方法での特別免許状授与までの流れの一例を見ていきますね。

(1)免許状の授与権者(都道府県教育委員会)が採用者の場合

(1)免許状の授与権者(都道府県教育委員会)が採用者の場合
  • STEP1
    教員採用選考実施要領などにより、外部人材の募集がある

  • STEP2
    免許状を有しない外部人材(あなた)が出願する
  • STEP3
    都道府県教育委員会による採用選考
  • STEP4
    都道府県教育委員会による特別免許状授与のための教育職員検定
  • STEP5
    都道府県教育委員会から特別免許状の授与を受け、採用される

自治体によってはいわゆる「スペシャリスト採用」など、教員免許状を持っていない状態でも受けられる教員採用試験が実施されている場合があります。

その場合、教員採用試験と特別免許状授与のための教育職員検定を並行して実施し、その両方に合格した場合に特別免許状を授与して教員として採用するという流れになります。

(2)採用先の推薦を得て特別免許状が授与される場合

(2)採用先の推薦を得て特別免許状が授与される場合
  • STEP1
    学校法人等から、外部人材の募集がある

  • STEP2
    免許状を有しない外部人材(あなた)が出願する
  • STEP3
    学校法人等による採用選考
  • STEP4
    学校法人等による採用内定
  • STEP5
    学校法人等から都道府県教育委員会に推薦・免許状授与申請
  • STEP6
    都道府県教育委員会による特別免許状授与のための教育職員検定
  • STEP7
    都道府県教育委員会から特別免許状の授与を受け、学校法人等から採用される

国立・私立の場合はこちらになる場合がほとんどかなと思います。

先に採用内定・推薦を得た上で、学校法人等から都道府県教育委員会に対して免許状の授与申請をしてもらうという流れになりますね。

教員採用選考試験応募の具体例

大分県の教採実施要項がとても詳しく書かれていて分かりやすかったので、例に挙げますね。
公式令和5年度大分県公立学校教員採用選考試験実施要項|大分県教育委員会

※あくまでも上記実施要項を掻い摘んだ内容で説明していきますので、応募に際しては必ずご自身で実施要項本文をご確認ください。

特別選考やスペシャリスト枠にも種類がある

特別選考Ⅱ「社会人特別選考」は、民間企業・官公庁等において常勤の職 ( 国公私立学校・学習塾・予備校等の教育職を除く) として3年以上継続して勤務している者であれば、普通免許状がない状態でも応募可能です。

あわせて志望する教科・科目に関する専門的な知識経験又は技能を有する者社会的信望があり、かつ教員の職務を行うのに必要な熱意と識見を持っている者が条件になっています。

特別免許状を発行する前提ということですね。

一方、高等学校教諭のうち指定の教科を指導可能でスポーツの指導者として優秀な実績を有する場合には特別選考Ⅲ「スペシャリスト特別選考」がありますが、こちらは普通免許状の所持が必須条件となっているようです。

こちらは残念ながら普通免許状がなければ応募できないということですね。

同じような名称の採用試験でも
応募条件に違いがあります。
年度ごとに変更もありそうですし
よく確認してくださいね!

応募に必要な書類

特別選考Ⅱ「社会人特別選考」には、必要な提出書類が2種類あります。

教員の職務を行うために必要な資質能力に関するアピール書(別紙様式1※)(自らの専門的な知識経験又は技能と教育指導との関連及び活用、これまでの指導歴その他教員としての資質能力についてアピールしたい事項)

https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2142174.pdf

志望する教科・科目に関する専門的な知識経験又は技能を有すると認められる資格 (国家資格、公的資格、民間資格の別を問わない。)を証する書類(写しでもよい。)

https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2142174.pdf

語れるだけの「担当する教科の専門的な知識経験又は技能」があるかどうかということですね。

採用後の研修

この試験による合格者は研修を実施するため、2023(R5)年1月に事務職員として採用され、研修期間を経た上で4月1日付けで合格した試験区分の教諭として任用されるそうです。

いきなり教壇に立つ前に、
約3ヶ月の研修があるんですね

その他の自治体の例

その他の自治体も、教員採用に関する実施要項の中にいわゆるスペシャリスト採用として詳細が書かれている場合が多かったです。
公式教員採用~教師になってよかった~ – 教職員企画課・教職員人事課:京都府
公式長崎県公立学校教員採用選考試験実施要項

要項は基本的にPDFになっていますし、いわゆるGoogle検索だとうまく引っかからない場合もあるのかも?と思いましたが、申し込もうという意欲のある人はすでに要項を取り寄せている気もしますね。

こちらの茨城県は、夏に行われる通常の教員採用試験実施の後に、スペシャリストを対象とした特別選考を秋に設けていました。こうして時期を分ける場合もあるんですね。
公式令和4年度採用茨城県公立学校教員選考試験[スペシャリストを対象とした特別選考](Ⅱ期)について | 茨城県教育委員会

石川県のHPには特別免許の授与に関するページがありますが、個人からの申請は受け付けていないと明記されています。国立や私立の採用担当者向けページなのでしょうか。
公式石川県/「特別免許状」の授与出願

こんな感じで自治体や年度によって採用状況はさまざまなので、気になる自治体には直接問い合わせてみてくださいね。

気になる点・特別免許の目的は欠員補充ではない

こうしていろいろと情報を見ていると、特別免許はその名の通り、かなり特別なスキルを持った人が活用している制度であるように思います。

ただ、文科省は今般、教員不足解消を目指して特別免許の取得を促しているんですよね。

いわゆる「普通の先生」を増やさないことには特別免許を持つ先生への指導や研修などのケアが十分に回っていかないのでは?という懸念があります。

特別免許の仕組みを知らない生徒や保護者が「え?教員免許を持っていない人が先生?」と不安になることも十分考えられるわけですが、人手不足の学校で、生徒も保護者も特別免許の先生本人も不安にさせないだけのサポートや指導が、はたして満足に実施されるのでしょうか。

そもそも、特別免許状って
欠員補充が目的ではないんですよね。
先生にとっても、サポートが不十分だと

不安になってしまうと思う…

せっかく優れた人材に「先生」になってもらっても、必要なケアやサポートが受けられずに辛くなって辞められてしまってはもったいないですよね;;

おわりに

今回は特別免許状という制度の仕組みや活用事例、どのような手順を踏めば先生になれるのかについてご紹介しました。

特別免許状の場合は普通免許状を持った「教諭」と同等の立場ということですが、担当教科の専門性ということだけで言えば、特別免許の先生の方が優れている場合があるかもしれませんね。

そうなると普通免許状の先生の立つ瀬がないようにも思えてしまうわけですが…

「子どもの発達や心理に関する知識」や、担当教科についてもあくまでも「学校教育としての知識」という意味で言えば、やはり普通免許状の先生が持つ知識が学校現場には必要であると思います。

知識を生かすスキルと、知識を誰かに教えるスキルは、まったく異なるものですしね。

さまざまな人材が働くことで
生徒の興味関心を多角的に

引き出していけるといいですよね

この記事が学校現場に関わる方やこれから特別免許状の取得を考えている方にとって、少しでも参考にしていただければ嬉しいです。

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