こんにちは。
元美術教師のうさぎ先生です。
全国的に教員不足が問題になっている今、「職員室で結婚を祝福されなかった」「子どもはまだ遠慮してくれと暗に言われた」という声をよく聞きます。
実際のところ、副教科の先生たち…
産休・育休が取りづらい雰囲気ってありませんか?
「どの教科・学校種でも取りづらいよ!」と言われてしまうかもしれませんが、今回はあくまでも学校に専任教諭が1人しかいない副教科(美術)の先生という立場で、わたし自身の経験や周りの先生たちの実例を交えながら、率直な意見を書いてみようと思います。
- 副教科の専任教諭の先生
- 産休を取りたいと思っている先生
- 妊活タイミングを迷っている先生
- 妊娠を機に退職を考えている先生
こんな方におすすめの記事です。
妊活や産休について知りたい先生やその周囲の方は、ぜひ最後までご覧くださいね。
学校の先生の産休・育休期間
産前産後休業(産休)の期間
「産前産後休業(産休)」とは、母体保護の観点から認められている休業です。
休業日数は産前と産後に分けて計算されます。
- 産前…出産予定日を含む6週間(双子以上は14週間)以内
- 産後…8週間以内
勤続年数は関係ないので、たとえば新任1年目でも取得可能です。
育児休業(育休)の期間
「育児休業(育休)」とは、養育する子が満1歳の誕生日を迎える前日まで認められている休業です。
一般的には保育所に入所できない等の理由で2歳まで延長される場合がありますが、公務員(公立教師)は3年間育休を取得できるといわれています。
つまり満3歳の誕生日を迎える前日までですね。
自治体や学校法人の独自ルールも
事前に確認してくださいね
なお、上記の期間中に職務を補助・代行する教員を産休補助教員や産休代替教員と言います。
募集の際は「理由を問わず欠員が生じた場合の代替」として、単に臨時的任用教員・非常勤講師という名称になる場合もありますよ。
それではここからは本題として、私学の副教科の先生が産休・育休を取りづらく感じる理由について詳しく書いていきますね。
私学の副教科の先生が産休・育休を取りづらく感じる理由
教科担当が学校に自分1人しかいない
これは単位数の関係で仕方がないのですが、音楽や美術といった副教科の先生って各学校に1人だけっていう場合も珍しくないんですよね。
よほどの大規模校ではない限り「美術の先生や家庭科の先生が複数人いる」ことは稀ですし、複数人いる場合もほとんどは「専任1人+非常勤講師」という構成です。
この状況で唯一の専任(いわば責任者)である自分が産休・育休を取得して休んでしまうと、その学校のその教科のことを継続して見ていける先生が不在になってしまうんです。
代わりがいない立場って、
すごく辛いんです…
そもそも専任が2人以上いれば
状況が変わると思いますが、
単位数的な難しさもあり…
産休代理の先生へのフォローが難しい
産休・育休代理として講師の先生が臨時配属されたとして、その先生は何か疑問や質問があったときに尋ねる相手がいない状態になります。
いくら事前に引き継ぎをしていたとしても、実際に授業をしていれば確認したいことは出てきますから、代理の先生にとってはすごく気の毒な状況ですよね。
成績処理の方法についても学校や自治体ごとの特徴がありますし、ただでさえ副教科の成績処理は誤解されやすい面を持っていますから、代理の先生が一人でおこなうのはかなり難しいものです。
これが国語や数学であれば、他にも「同教科の専任の先生」がいらっしゃる可能性が高いので、周りもある程度のフォローやアドバイスが出来るわけなんですよね…。
産休・育休を取得する側としては、
こういった状況を申し訳なく
思ってしまうということです…
教科特性を含んだ部活動のフォローが難しい
教科の特徴を含むクラブ顧問を持っている場合も多いはずです。
美術教師であれば美術部や漫画研究部、家庭科教師であれば調理部などですね。
教科の唯一の先生が不在になるということは、部員の生徒にとっても困った状況になってしまいます。
- 引率教員不在で夏合宿ができない
- 予算の使い方が分からない
- 大会への申し込みに間に合わなかった
こんな事態が起こり得るんですよね。
そしてこれは私学特有かもしれませんが、大会実績=学校の特色になるような部活動の場合は特に、「○年連続入賞」「最優秀賞獲得」などが生徒募集・入試広報的な意味でもプレッシャーになります。
そう言った意味でも、産休代理の先生にも生徒にも申し訳なく思ってしまうんです;;
「先生が産休とったせいで」
「代理の先生の指導力不足」
などの声が出てしまうと…
辛いですよね…
私立特有の属人化で、引き継ぎの文化に乏しい
公立の場合は定期的に異動がありますから、組織として先生が入れ替わることに慣れているんですよね。
わたしは私立校勤務でしたが、私立の場合はちょっと違うんです。
無期雇用の専任教諭であれば40年間同じ先生が同じ学校に務め続けるということも珍しいことではありませんから、先生が入れ替わることに不慣れで、組織全体として別の人に業務を引き継ぎするという意識が薄いんですよね。
教科の仕事以外に校務分掌や行事委員会などの業務についても、「マニュアルを作らずに言伝でやってきた」という学校は案外多く、引き継ぎ資料が存在しない場合もままあるのです。
ある種の牧歌的な雰囲気というか、「これって大体こういう感じでやってたよね」「あの名物先生がすべてを牛耳ってるから」で成立してしまうんですよね;;
変な話、産休・育休に限らず誰だって急病や事故や介護で休職せざるを得ない可能性は持っているわけですから、校長や教頭ならまだしも一介の教員がいなくなったぐらいで他の先生では分からなくなってしまう状況っていうのは、組織としては避けるべき状況であるはずなんですけれどね…
「分かる人間が1人しかいない」
といういわば属人化された状態って
組織としてかなりリスキーです…
それでも近年ではさまざまなものがデジタル化されたり在宅ワークの導入があったり、私学においても引き継ぎ文化が少しは育まれやすくなってきているようですが、公立と比べるとまだまだだと思います。
これらの理由によって、副教科の先生たちには安心して休めない状況があるんですよね。
学校=妊娠が喜ばれない職場、になっている現状
こちらは2024年5月の報道で、高知県の公立学校の例です。
「妊娠してすみません」なんておかしいですよね…
でも実際のところ教員不足のため、多くの現場で「出産予定で産休開始日が決まっていても、人員配置に対応できていない実態」なんだそうです。
以前こちらの記事でも取り上げましたが、高知って県内公立中学校のおよそ7割で一部授業の専門外指導が行われていることが2021年に報道されていましたよね。
高知は小規模校の多さもあって、教員不足に相当苦慮しているようです…
妊娠を機に教師を退職する決断も
過労が妊活や妊娠中の体調に差し障る
実際、「子どもが欲しいから退職します」という先生もいらっしゃいます。
- 忙しすぎて妊婦として安静に過ごせない
- 不妊治療にもっと時間を取りたい
- 自治体や学校が産休取得に対応できていないことへの不安・不満
こういった例があるようです。
わたし自身は在職7年目に結婚し、8年目を終えるときに退職しています。
結婚や出産は直接的な退職理由ではありませんでしたが、「勤務する中学校で唯一の美術の専任教諭」でしたので、もし勤務を続けているときに妊娠していれば産休を取得せずに退職を選んでいたと思います。
そもそも多忙すぎる業務量だったので、産休どころかそれ以前につわりや妊婦定期健診に対応できなかったであろうことも容易に想像がつきます。
適切な体調管理ができない日々が続けば、妊娠の継続に影響する可能性だってあり得ますよね。
わたしは退職後に出産しましたが
妊娠中はなにかと体調不良な日も
多かったので、教師との両立は
不可能だったなと思います…
産む直前まで生徒に言えないことが、精神的負担に
大人ばかりの職場と違って、学校現場では「実はいま妊婦で…」といって周囲に配慮してもらうことが難しいんですよね。
「安定期より前に早めに言ってしまってもいいのでは?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、その後に流産や死産という悲しいことが起きてしまった場合、実際のところ生徒たちもなんて反応していいかわからないですよね…;;
実際、切迫流産で入院したけれど
生徒には理由を言えず…とか、
産休直前までずっと黙っていた…
なんて経験を持つ先生方が
知り合いにいらっしゃいます
金銭面だけ考えると妊娠を機に退職するのはもったいないことなのですが、妊娠中のさまざまな精神的な負担が軽減されることは大きいですよね。
男性教師の育休取得について
勤務校では、男性教師が1年間の育休を取得する例がいくつかありました。
子どもの誕生日(出産日)にもよるとは思いますが、わたしが知っている例ではたまたまいずれも4月〜3月の1年間の取得でしたので、クラス担任や教科担当の切り替わる節目になっていて大きな混乱はありませんでした。(取得時期や期間については、法人独自ルールや有休活用もあったと思います)
ただ、いずれも国語や数学といったいわゆる主要5教科の専任教諭でしたけどね><
もし副教科の先生だったら、
育休にしろ介護休暇にしろ
やっぱり難しいと感じて、
退職を考えるような気はする…
おわりに
今回は副教科の先生たちの産休・育休が取りづらい状態について、わたしなりに在職中に感じていたことを書いてみました。
生徒にも代理の先生にも申し訳ないっていう気持ちでいっぱいになるし、安心して休めないんですよね…
産休を取りづらい雰囲気→じゃあ教師を辞めようという流れは教員不足をさらに加速させてしまいますが、そうなるのも頷けると思ってしまいます。
「子どもが好きだから教師を目指した」という人も、本来は多いはずなんですけどね;;
そして子どもがいない先生は、それはそれで保護者から悪印象を持たれる場合もあるという…
「生徒のことは任せた!わたしの人生はわたしのものだから!!」とスパッと気持ちを切り替えられる人じゃないと、教師を長く続けるのは難しいのかもしれません。
妊活や産休について知りたい先生やその周囲の方にとって、この記事が少しでも参考になると嬉しいです。
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