こんにちは。
元美術教師のうさぎ先生です。
わたしが美術教師をしていた当時、プリント作成時などに「どっちだったかな?」と迷いやすい漢字については、付箋に書いてデスクに貼っていました。
たとえばこんな感じです。
- 測る…長さ・深さ・身長・血圧
- 量る…重さ・容積・体重
- 計る…時間・タイミング
- 学校の周り・周りの目
- 身の回り・時計回り
ところが、このような異字同訓の漢字については年代差や各分野における表記習慣の違いから、明確な使い分けは難しいとされているものもあるんです。
「かたい粘土」
さて、みなさんはどの漢字を選ぶでしょうか。
「かたい」は美術や家庭科で
よく使う漢字ですが、
使い分けには諸説あるんです
先生という立場上、どういう根拠でその漢字を使っているのかを児童・生徒から質問された時に説明できるようにしておく必要があります。
「かたい」は現役の先生方にとってもきっと迷いやすい漢字だと思うので、わたしなりに調べた使い分けの根拠を記事として残しておくことにしました。ぜひ最後までご覧くださいね。
粘土は固い?硬い?堅い?
結論から先に言うと、わたしは「硬い粘土」の字を使っていました。
たとえば水粘土なら「かたい粘土に水を加える」という表現を使います。
「かたい」には3つの漢字があります。
- 固い
- 硬い
- 堅い
意味の違いをパッと説明するのは難しいですよね。
対義語を考えるとイメージがわかりやすくなると言われています。
- 固い …「緩い(ゆるい)」
- 硬い …「軟らかい(やわらかい)」
- 堅い …「脆い(もろい)」
それでも、固いと硬いの違いは区別しづらいように思います。
「固い」の意味・例
「固い」は固形の固で、外から侵されず形が変わらない(=緩くない)という意味です。
粘土は水を加えて緩くすることができるのですが、口語表現としては「水を加えて軟らかくしましょう」と言いますよね。
緩い液体というと、もっとホットケーキの生地のようなびしゃびしゃな状態を指すようにも思います。
「粘土が固まっちゃった!」という場合には「固」の字を使いますが、「固まる」と「固い」はまた別の意味なんですね。
なんとなく、広く使われるのは
この「固い」な気もする…?
「硬い」の意味・例
「硬い」は材質が密で形が変わらない(=軟らかくない)という意味です。
スポーツの硬式・軟式もよく使いますし、対義語がわかりやすい漢字ですよね。
美術のデッサンなどでよく使用する鉛筆の芯は硬度という言葉を使いますし、「BよりもHBのほうが硬い」「Bの数字が大きくなるほど芯が軟らかくなる」という表現になります。
「硬い粘土には、水を加えて軟らかくしましょう」という表現からすると、「硬い粘土」が適切であるように思いますね。
たとえば「軟便」の時は
「お腹がゆるい」と言うけど…
ゆるいの反対は固い?
便には一般的には「硬い」を
使うことが多いようです
「堅い」の意味・例
「堅い」は中身がぎゅっと詰まっていて砕けにくい(=脆くない)という意味です。
3つの「かたい」の中でも手堅い・身持ちが堅いという比喩表現で使われることが多いです。
物質としては木材や炭に対して使われますし、おせんべいも「堅焼き」なんていいます。
歌手の平井堅さんのお名前もこの漢字ですね。
粘土には使わなさそうな
感じがしますが…
Google検索のヒット数で比較
3つの言葉をGoogleで検索してみました。
- 「固い粘土」…約63万件
- 「硬い粘土」…約160万件
- 「堅い粘土」…約62万件
圧倒的に「硬い粘土」が多いですね!
最も多いのは「硬い粘土」
「硬い粘土」は最もヒット数が多く、大阪美術教育学会の資料や陶芸用品店の彩里陶材などで使われていました。
「硬くなった」場合以外に、「(乾燥した後に)硬度が高いタイプの粘土」という意味で使われている場合もありました。
「固い粘土」は小学生向け
「固い粘土」については粘土メーカーのPADICOで使われていました。
実は「固い」は、「硬い」よりも早く学習する漢字であることを理由に使用される場合もあるようなんです。
固→小4 硬→中2 堅→中1
広く一般的に使われている印象がありましたが、なるほど小学校で習うのは「固い」だけだからですね!
ちなみに「粘」は中2、「土」は小1です。
そういう意味では、
小学校高学年の図工なら
「固いねん土」になる!?
「堅い粘土」は地盤の粘土質
そして意外だったのですが、「堅い粘土」は厚生労働省のページに使用されていました。
「固い」と同じぐらいのヒット数だったので疑問に思ったのですが、なるほど地盤としての粘土質地盤の「堅さ」という表現があるんですね!
「やわらかい」もややこしい!
お気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、対義語とされる「やわらかい」にも「軟らかい」「柔らかい」の2種類があってややこしいんです。
しなやかさを表す「柔」の対義語は力強さを表す「剛」なので、物理的なかたい・やわらかいには「硬い」「軟らかい」を使うのが一般的なようです。
とはいえ「柔軟」なんていう言葉もあるぐらいなので、「かたい」に比べると漢字の区別をせずにひらがなで表現されていることが多い印象です。
ちなみに学習するタイミングはこちらです。
柔→中1 軟→中3
小学校では習わないんですね。
おわりに
今回は「かたい粘土」についてどの漢字を使うべきか、3つの漢字の意味や対義語、活用例を挙げながら違いを詳しくご紹介しました。
美術の授業における「かたい粘土」では「硬い」が適していますが、小学校の図工であれば4年生で習う「固い」を使用することになります。
- 美術…「硬い粘土」
- 図工…「固いねん土」
- 地理・理科…「堅い粘土」
無難な使い方という視点で言えば、小学校で習う「固い」に集約してしまうのがかんたんですね。
この記事を書きながらふと考えたことですが、家庭科においては焼く前のクッキー生地なら「固いから水を足しましょう」ですが、焼いた後のクッキーがしっかりめなら「硬めのクッキー」、失敗してカチカチになってしまったなら「堅いクッキーになった」という表現になる…?
「固茹で卵」「硬いご飯」など
料理や食べ物に関する漢字も、
けっこう難しい…
家庭科の先生、大変そう;;
プリントや板書に使う漢字の使い分けについて困っている先生方にとって、この記事が少しでも参考になると嬉しいです。
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